「終活」という言葉をよく耳にするようになりました。終活とは、人生の終わりについて考え、備える活動のことです。終活は自分自身の地上での最期(死)に焦点が当たりがちですが、今までの自分自身の歩みを振り返り、残りの人生を充実させるためにどのように過ごすかといった「生きる」ことを前向きに考えるためのものでもあります。
「終活」の起こり
「終活」という言葉が生まれたのは2009年と言われています。2009年には終活に関する書籍が多く出発され、「終活ブーム」が起こりました。終活が世間に浸透した背景として、少子高齢化や核家族化、長寿化などがあげられます。介護や死後の手続きなど、残される家族の負担を減らし、自分自身が納得した最期を迎えるために、自らの老後や死後について備えるという意識が高まったのでしょう。
「終活」のメリット

終活については良い点と問題点があると思います。まず、良い面については、自分自身のこれまでの歩みを振り返る機会になる、ということがあります。それまでの多くの人との出会いや交わりを思い起こし、感謝の思いが出てきたり、何かを大切なことを思い出す機会になるかもしれません。また、自分の人生でやり残したこと、やってみたいことを考え、一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。そのように自分の人生を振り返り、これからの人生について考えるきっかけに成り得ます。また、何か大切なメッセージを残すきっかけにもなります。
私の教会では、「私の軌跡」という用紙(エンディングノートのような物)を用意し、教会の皆さんに配布しています。以前は、「私の葬式の備え」という販売されてた物を利用していましたが、“葬式”という文言が生々しいということもあり、名称を変え、内容も書きやすいも物を作りました。「私の軌跡」には、それまでの略歴や好きな聖書箇所、好きな讃美歌、葬送式(葬儀)などの希望、ご家族や大切な人に残したい言葉などを記す箇所があります。葬送式の準備をする際に、この「私の軌跡」を確認しながら、葬送式の内容を決めたり、葬送式のお話の準備なども行います。地上での最期の時、ご自身(故人)の希望に沿う形で天国へお送りしたい、温かい式で送り出したいと思っています。なので、この「私の軌跡」があることで、故人の大切なメッセージをご遺族や親族、葬送式にお集まりの皆さんと共有することができるのです。教会でなくても、ご自身の略歴や大切な方々へ残したいメッセ―ジ、遺影に使う写真、葬儀の形などを残しておくのは良いことのように思います。

さらに、必要な物、不必要な物を整理することも大事なことだと思います。私の祖父が亡くなった時、葬儀などで疲れていた両親に代わり、私が遺品などを整理しました。恐らく、祖父にとって大事なものだったであろう遺品の数々を確認しながら、不必要な物を廃棄する準備を進めました。しかし、正直、何を残し、何を廃棄してよいのかわからず、遺品整理の難しさを痛感しました。その経験があり、「もし、自分に何かあった時に娘が私の遺品整理をするのは大変なのではないか」と思い、引っ越しするタイミングがあったので、自分の物を思い切っていろいろ捨てることを決断しました。思い出の品々を見ていると、捨てることを躊躇しそうになる自分がいましたが、「娘が遺品整理で困らないように」と思い、7割くらいの物を思い切って捨てました。物を捨てる時には少し寂しい気持ちにもなりましたが、少し気持ちが楽にもなりました。とはいえ、物は不思議と増えていくので、時々物を整理していかなくてはと思っています。
「終活」の問題点

では、終活の問題点には何があるでしょう。まず、終活は死を意識するので、死を意識し過ぎることで気持ちが落ち込んでしまうことがあるかもしれません。気力や体力などがある時に考えてみるのが良いかもしれません。また、終活は、自分の物の整理など自分の意志で進められるものもあれば、医療や介護、葬儀、納骨、遺産などご家族と話し合い、確認しなければいけないものもあります。それらは、自分が存命で元気な時になかなか話題にならない事かもしれません。あえてそのような話をするのは、ご本人の事であっても、ご家族のことであっても、気が引けるものかもしれません。しかし、暗い話としてではなく、ご家族にとって大切な節目の話なので、家族などで確認しておくと、後々のトラブルを避けられるというメリットもあります。ご家族でこれからの家族の歩みの一つとして確認しておくことをお勧めします。その他にも、終活については、クレジットカードや銀行口座の暗証番号などをメモして残す、葬儀会社を決めておく、お墓について、ご家庭によっては不動産についてなどなど確認したり、準備したり、何か取り決めておくことなど山のようにあります。例えば、身よりのない方などは亡くなられた時にどうすべきなのかということなど、その方の状況によっても準備すべきものは変わってきます。地上での最期の時にどのようなことが必要なのか、ご自身の状況を踏まえて確認しておくことも必要なことだと思います。

冒頭にも記しましたが、終活とは地上での最期の時を強く意識するものですが、残された地上での時をどのように生きるのか、どのように充実したものにしていくのかという視点も大切です。与えられた命を最後までまっとうする。最後まで生き抜くことを大事にしていきたいと思います。一生に一度の人生です。あなたならではの生き方を大切にすることも大事な終活の一つであることを心に留めていただければと思います。