我が家はラブという犬を飼っていました。オスの黒色のラブラドールレトリバーで、人懐っこい性格でたくさんの人に可愛がってもらっていました。娘が3歳の時に飼った犬で、それから12年間我が家の一員として一緒に暮らしていました。
突然訪れた最期のとき
それまで大きな病気もなく元気に過ごしてきたラブでしたが、今年(2024年)の夏に体調を崩して病院に行き、肺炎と診断されました。肺炎以外に、口に腫瘍ができているのが見つかり、メラノーマというあまり良くない腫瘍であることがわかりました。しかし、まずは肺炎の治療をしないと、腫瘍が大きくなるのを抑える薬を服用させることができないということで肺炎が治るのを待ちました。11月中旬に病院へ行って、血液検査やレントゲンなどを撮り、ラブの身体の中に腫瘍の転移などがないかを確認しました。幸い、転移はなく、全ての数値が正常値でホッとしました。ラブも元気に毎朝、毎晩の散歩に出かけていたので、もうしばらくは一緒に過ごすことができると思っていました。
しかし、病院へ行った翌週、急に食欲がなくなってしまいました。その翌日には立てなくなり、横になっていました。ちょうどその日は私が非常勤講師として勤めている学校での授業がある日だったので、ラブのことを心配しながら出かけました。すると、昼頃に妻から「ラブがかなり苦しそう」との連絡が入りました。その日は授業で期末試験を生徒に返す日だったので、休むわけにもいきません。5時間目に自分の授業を終えて、急いで家に帰りました。途中、妻から「ラブの息が浅くなってきた」という連絡をもらい、なんとか間に合ってほしいと願いながら家に帰りました。幸い、まだラブは頑張ってくれていました。しかし、私が帰ってから15分後に、最後の力を振り絞って立ち上がろうとし、大きく鳴いてから息を引き取りました。私が帰るのを待ってくれていて、最後にお別れを言ってくれたのだと思います。
離れて暮らす娘に伝える愛犬の死
小さい頃から私は大きな犬を飼いたいと思っていたので、ラブを家に迎えた時は本当に嬉しかったのを覚えています。12年間、毎朝、毎晩一緒に散歩をしていたので、その散歩がなくなり、寂しい毎日です。散歩の時に私が一方的にラブにいろいろな話をしていました。愚痴や不満、不安、嬉しかったこと、楽しかったことなど。今はそれを話す相手がいないので、改めてラブが私の他愛もない話をいつも聞いて、隣りに寄り添ってくれていたことを思い、感謝の思いでいっぱいです。
ラブが亡くなり、一つ大きな課題に向き合うことになりました。それは娘にラブの死をどのように伝えるべきか、ということです。娘は新潟の高校に入学し、家を離れて寮生活をしていました。娘は3歳の頃からラブと一緒に過ごしてきたので、寮に入る時、「ラブに何かあったらすぐに連絡する」という約束をしていました。なので、ラブが亡くなる前に寮には連絡しましたが、まだ娘は寮に帰ってきていませんでした。ちょうどラブが亡くなった日の翌々日から娘は学校の期末試験があり、とても大切な時期でした。娘にとって大好きなラブが亡くなったということを伝えれば、娘が大きなショックを受けることはわかっていました。
「今、伝えるべきか? 後で伝えるべきか?」心の中であれこれ考えました。しかし、娘にとって大切な存在のラブの死を後で伝えるのは、不誠実に思えたので、娘が落ち込むことはわかっていましたが、しっかりとその日のうちに伝えることにしました。せめて最期にラブを娘に会わせてあげたいと思い、娘の学校の近くのペット霊園にある火葬場でラブを火葬することにしました。新潟までラブを運び、期末試験が始まる前に、ラブを娘に会わせてあげることができました。娘が書いた手紙と一緒にラブを火葬しました。娘はとても落ち込みましたが、学校の友だちや先生方にたくさん支えてもらえたようです。ラブの死を通して、娘を支えてくれるたくさんの存在にも気付かされました。
ペットとの別れとお祈り、葬儀
以前、愛犬を亡くされた方にお願いされて、ご自宅へお祈りに行かせていただいたことがあります。ペットの葬儀とまではいかないですが、天国へお送りするためのお祈りをどのようにすればよいのだろうと戸惑った経験があります。もちろん、その飼い主さんにとってペットは大切な家族の一員ということは心の中でわかっていましたが、実際にラブを天国へ送り、私が想像していたもの以上の何とも言えない喪失感や悲しみに襲われました。ペットを亡くした時に遺されたご家族に大きな慰めが与えられるようにお祈りすること、大切なペットが天国へ召されるようお祈りすること、天国と地上に離れても、その大切な関係がずっと続いていくことなど再確認するためのお祈りや地上から見送る大切な最期の時は必要不可欠だということを痛感させられました。
ペットとの別れに際してのお祈りや葬儀についてはいろいろな考え方があるのかもしれません。教会によっても、牧師によっても、さまざまな向き合い方があるのだと思います。私の場合ですが、ペットであっても最期の時、ご家族の求めに応じて、お祈りさせていただいたり、葬儀を行うなど遺されたご家族の思いに寄り添う何かを行うことはとても大切なことだと思っています。この地上で出会いと交わりを持つのは何も人間だけではありません。家族の一員としてペットを飼われる方も多くいます。ペットは身近にいる動物・生き物という領域を超えて、家族のかけがえのない存在になります。さまざまな思い出を共有し、時に私たち人間を慰め、励まし、癒しを与えてくれる大切な存在です。今回は愛犬ラブの死を通して、さまざまなことを考えさせられ、大切なことに気付かされました。ラブの天上での平安を祈りつつ、ラブに教えてもらったことを大切にしながら働きを担っていきたいと思います。