街に出てみた。するとある場所に雑貨店があり、どうも気になったので立ち寄った。良い香りがする。聞いてみると、箱入りのお香がその匂いの元らしい。商品名は「HAKO」。なるほど、「箱入りのお香」を省略したわけか。
香りが持つ様々な効果
その香りは、私にとって、リラックス効果があるように思え、箱を開くと、葉っぱの形をしたお香からラベンダーとセダーの合わさった香りがした。聞いてみると、確かにリラックス効果があり、睡眠前に嗅ぐと、よく眠れる効果があるらしい。
匂いは人の気持ちをくすぐったり、興奮させたり、リラックスさせたりと様々な効果があるのは皆さんもご存じであろう。例えば、さほどお腹がすいていなくても、良い匂いを嗅げば、なんだかお腹がすいたように気分になる。通りすがりに香水の匂いがすると、なんだか幸せな気分になる。人工的な香りでなくとも、自然の中に溢れる匂いや香りは人の気分を優しくさせる。その逆もあり、とんでもなく臭い匂いは気持ちを減退させてしまう。
香りは実感するものであり、香りがない場所では話題になりにくい。だが、多くの方々には好きな香りというものが幾つもあるはずである。例えば、私は先ほど書いたラベンダーとセダー以外に金木犀(キンモクセイ)の香りとローズの香りが好みである。
キリスト教における香り
キリスト教の香りの代表格は、クリスマス物語(別名:イエスの誕生物語)で3人の博士が持ち寄った贈り物の乳香(フランキンセンスの香り)、没薬(ミルラの香り)である。特段、キリスト教の礼拝でこの香りがするわけではない。だが、クリスマス近くになると、この香りが香水ショップで売れるのは、やはり関係しているのではないかと想像する。
日本における香り
日本に目を向けると、和の香りの歴史は、595年に流れ着いた流木を炊いたところ、良い香りがした、というのが始まりだそう。その後、平安時代では、家督独自の香りを作って競う「薫物合(たきものあわせ)」という遊びが流行した。リラックス効果も昔からあり、祈りの際の重要アイテムとして、寺社仏閣で香りは広く使われ、その結果、室町時代では香道(こうどう)という文化が定着した。若い頃、京都に住んでいた。そのときには、様々な家から素敵な匂いがしていたことを思い出す。匂いは生活の一部として染みついていたのだろう。
葬儀における香り
葬儀に目を向けると、仏教では香を焚く。もちろん、煙も出る。お香の香りや煙には、空間や心身を清める作用があると言われ、葬儀や法要でお焼香することは、手を合わせる自分自身や周囲の雰囲気と気持ちを落ち着かせる要素があると言われる。神社では葬儀の際にお香は焚かないが、香り袋なるものがあり、魔除けになるといわれている。
キリスト教はプロテスタントとカトリックに分かれている。カトリックでは(毎回ではないけれども)香り付きのロウソクを使用して、葬儀会場を香りで満たすこともある。プロテスタントでは、香りを出すものは置かないが、それは置いてはいけない、ということではない。むしろ、故人が好きな香りがあれば、それを会場に満たすことは問題ない。気をつけたいのは、生花の香りと合わさってしまうことぐらいだろうか。
キリスト教の葬儀が大事にしているもの
キリスト教の葬儀が大事にしているものに、故人の生涯を思い起こし、その存在を忘れずに心に留めることがある。愛する者がただ、死を迎えたということだけではなく、私達に残してくれたものを忘れないことも大切なこと。故人の好きだった香りを私達も大切にすることで、その香りがいつまでも私達に残る。香りそのものに癒やされて、故人を忘れないことでこれからの人生を大切に生きられる。
愛する者の葬儀や、ご自分の葬儀の際、もしキリスト教式でされるのであれば、好きな香りを満たすことも選択肢の一つになるのではないかと思う。