「死」はだれのものか?あなたならどう答えますか?
アナグマは、動物たちみんなから頼りにされ愛されています。アナグマは、多くの歳をかさね、知らないことはないというぐらいの物知りでした。深い知恵をつちかってきたアナグマは、自分の死がそう遠くはないことも知っていました。
あとに残される者のことを思う優しさ
アナグマは死ぬのは怖くありませんでした。もう十分生きたと思っているからです。
けれども、あとに残していく友だちの事が気がかりです。他の動物たちは、アナグマほど多くの経験を重ねているわけではないからです。あとに残される者のことを思う、心配する。その優しさが伝わってきます。
考えたすえにアナグマは、友だちのために手紙を書くことにします。みんなへの手紙を書き残したその夜、アナグマは不思議な、そして素晴らしい夢を見たのでした。
死もまた「わすれらないおくりもの」
残していく者と残されていく者、それぞれの姿を、「死」という誰もが出会うことになる出来事を中心において描くのが、この『わすれられないおくりもの』という作品です。
昨今では、「終活」という言葉があたりまえになってきました。「迷惑をかけたくないから」そんな思いで自分が死んだ後のことを先に片付けておく人が増えてきました。でも、残された人に必要なのは、葬儀や相続の煩わしさの軽減ではなく、ちゃんと亡くなった人のことを思い悲しむことではないでしょうか。そして、その「思い悲しむ」ことが残された人にとっての慰めとなっていくのだと思います。
『わすれられないおくりもの』では、「死」を通して、残していく者と残されていく者との間の豊かなかかわり(たとえ、見えなくなっても、触れることができなくなっても確かにそれはある)が描かれます。わたしたちは、「死」を通してさえ、愛情や友情、知恵を引き継いでいくことができるのではないでしょうか。
「わすれられないおくりもの」とは何かを考えると、アナグマが残した多くのモノ・コトであるのと同時に、「死」そのものも「わすれられないおくりもの」だと思えるのです。