【シリーズ】この人実はクリスチャン-長谷川和夫さん

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認知症医療の第一人者・長谷川和夫さん

 最初にご紹介するのは長谷川和夫さんです。どなたですか?と思われた方もいるかもしれません。あるいは医療関係のお仕事をされている方は認知症診断に用いる「長谷川式簡易知能評価スケール」の人と言われたらお分かりになる方もいるかもしれません。長谷川和夫さんは日本の認知症医療の第一人者として知られている方で、認知症の人への理解を広げるために尽力されました。とくに晩年は自らも認知症になり、自身の体験を『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』(長谷川和夫・猪熊律子著、KADOKAWA、2019年)に記して話題となりました。

 この本は認知症の専門医が正しい知識を分かりやすく私たちに教えてくれると共に、認知症の当事者として家族など周りにいる人たちに認知症患者が思うこと、感じること、その尊厳について教えてくれる内容です。特にご家族が認知症になったという方におすすめの一冊です。長谷川さんは2021年11月に永眠されました。

「なぜ生きるか」を考える中で

 さて、長谷川さんは先に紹介した著書の中でご自分がキリスト者(クリスチャン)であることを公表されています。20歳の時に洗礼を受けました。第二次世界大戦敗戦後という時代状況で長谷川さんは「なぜ生きるか」を真剣に考えるようになり、次第に考え続けることが苦しくなって通学途中にあった教会を訪ねました。そこで牧師さんと出会い、関わりを続けていく中で新約聖書・ヨハネによる福音書12章24節に記されたイエスの言葉「はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ。」に心を惹かれ、心の支えとなったそうです。

 長谷川さんは「日曜日は原則、教会に行きます。東京・銀座にある銀座教会に通っていましたが、いまは自宅近くの教会に行くことが増えました。かなり前になりますが、久しぶりに銀座教会に行きました。古くからの知り合いに会えるのは嬉しくて、副牧師による説教もよかった。ボクは賛美歌が好きで、聖歌隊や周りの方が歌っているのを聞くと、心が落ち着きます。認知症になってガックリ落ち込んでしまう方もいますが、ボクがあまりそうならなかったのは、キリスト教の信仰を神様が与えてくださっていることも大きいのではないかと思います。認知症にかぎらず、難しい病気にかかったり、苦難や困難に襲われたりしたとき、自分一人で考えていると気が滅入って鬱々となりがちです。そうしたとき、宗教の道に進んでみる、お祈りをしてみる、それもよいのではないでしょうか。」(『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』(長谷川和夫・猪熊律子著、KADOKAWA、2019年)、189ページ)と私たちにアドバイスしてくれています。

 皆さんも一人で考えすぎて気が滅入り、鬱々としてしまっている時はぜひお近くの教会に足を運んでみてください(とはいえ教会と言ってもいろいろあるのでとりあえず日本キリスト教団〇〇教会という教会をおすすめします)。そこで牧師さんや教会に集う人との出会いや対話を通して少しでも気が楽になるよう心から祈っています。

寒河江健
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