『まってる。』誰かとの「つながり」を思うあなたに読んでほしい絵本

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『まってる。』

作:デヴィッド・カリ、セルジュ・ブロック

訳:小山薫堂

出版社:千倉書房

 愛する人との別れ、そのとき私たちは否が応でもその人との出会いや交わした言葉、共に過ごした時間を思い出します。愛する人との「つながり」を思いだすのです。「つながり」という不思議な糸によって私たちの人生は結び合わされています。その糸は時に長く、短く、時に太く、細く、時に絡まり、また、ほどけていきます。そんな「つながり」を伝えてくれている絵本が『まってる。』(原題「Moi J’Attends…」)です。

「待つ」ことは切ないこと

 この絵本は、横長の変わった形です。その横長の形が私たちの人生を思わせます。書かれている内容は、一見すると誰にでも書けそうなシンプルな絵と文字ですが、その奥に、人生における大切なことへの豊かなメッセージを含んでいます。

 この絵本のキーワードは題名ともなっている「待つ」ことです。私たちが他者と生きていこうとするとき、そこには互いに期待と不安が溶け合った「願い」があるのではないでしょうか。「まってる」との言葉からは、その切ない願いが伝わってきます。

人生を描き出す、たくさんの「まってる」

 絵本のページをめくるたび、目に飛び込んでくるのはシンプルでやわらかな絵と文字ですが、ひときわ目を引くのは、その中に描かれる赤い糸です。それは、私たちの人生を結び合わせる「つながり」をあらわしています。

 「おやすみのキスを まってる」「ぼくの帰りを子どもたちが まってる」「仲なおりのきっかけを まってる」「『心配ないですよ』というひとことを まってる」「『さようなら。ありがとう』って言わなきゃいけない日を……」。一人の人の人生が語り出されていきます。

「待つ」ことは「祈る」こと、「祈る」ことは「つなぐ」こと

 出会い、結ばれ、つながれた糸は、いつの日か、ほどけ、離れ、別れていきます。そのことを知っているからこそ人生の折々において「待つ」ことが、静謐な祈りとなっていきます。

 しかも、その祈りは、終わったように見えて、断ち切れたように見えて、実は、次の「つながり」へと私たちを結び合わせ、つなぎ合わせていくのです。

 愛する人との別れによって、悲しみに捕らわれるとき、寂しさに閉じ込められるとき、ぜひこの絵本を手に取りページをめくってみてください。ぜひ、「まってる」との言葉と共に、ゆっくりと一枚いちまい、愛する人との「つながり」を思いだしながらページをめくってみてください。

杉本和道
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